繰りかへすのが死ぬほど嫌ひだつた。どんなことでも、もう一度はなして貰ひたいなどと言はうものなら、きまつて、何か新事実をつけ足すか、でなければ、まるで似ても似つかぬものに作りかへてしまふのが、いつもの伝《でん》であつた。ある時のこと、一人の紳士が、――とはいへ、われわれ凡俗にはああした人たちをいつたいどういつて呼ぶべきかが既に難かしい問題なんで、戯作者かといふに戯作者でもなし、いはば定期市《ヤールマルカ》の時にこちらへやつて来る、あの仲買人とおんなじで、矢鱈無性に掻きよせて、何彼《なにかに》の差別なく一手に引き受け、剽窃の限りを尽してからに、ひと月おきか一週間おき位に、いろは本より薄つぺらな小冊子を矢継ぎばやに発行するといつた手合なんだが――さうした紳士の一人が、他ならぬこの物語をフォマ・グリゴーリエ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチから聴きこんだ訳だが、フォマ・グリゴーリエ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチの方はもう、そんなことはとつくに忘れてしまつてゐたのぢや。ところが或る日のこと、ポルタワから、他ならぬその紳士が豌豆色の上つ張りを著こんでやつて来たのぢや――この仁の
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