―足をあげようとしても、どうにも足があがらないではないか! 何といふ奇妙なことだらう! で、改めて踊り直しにかかつたが、まんなかまでゆくと、やつぱり駄目だ。どうしても、まるきり駄目なんだ! 両足が棒のやうに固くなつてしまふのだ。※[#始め二重括弧、1−2−54]かう、魔性の地点《ところ》ぢや! 悪魔のそそのかしだ! あの人間の敵、ヘロデめが絲を引いてゐくさるのぢや。※[#終わり二重括弧、1−2−55]
いやはや、運送屋たちの前で何といふ恥さらしなことだらう! そこで、また改めて踊り直しにかかつたが、まつたく、端から見てゐても気持よささうに、細かい達者なステップを踏んでゐる。ところが、中途まで来ると矢張り駄目だ! どうしても踊りぬくことが出来ない!※[#始め二重括弧、1−2−54]ええい性悪な悪魔めが! 饐《す》えた甜瓜にでも咽喉を詰らせやがれ! もつと小さい中にくたばりくさるとよかつたんだ、畜生め! この老齢《とし》になつて何ちふ恥をかかされるこつた!……※[#終わり二重括弧、1−2−55]さう言へばまつたく、誰か後ろでくすくす笑つた。
で、爺さんが振りかへつて見ると、どうだらう、
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