末だから。さて、祖父は運送曳きの連中といつしよに長いこと私たちの踊りを見まもつてゐた。私は、祖父の足がまるで何かに引つぱられるやうに、ちよつとの間もじつと一と処に停つてゐないのに気がついた。
「フォマ、御覧つたら。」と、オスタップが言つた。「きつとあの耄碌爺さんが踊りだすから!」
 どうだらう! 兄がさう言ふか言はぬに、もう爺さん辛抱を切らしてしまつたのだ。運送屋たちを前において、ひとつ達者なところを見せてやらうと思ひついたわけだ。
「かう、餓鬼ども! それが踊りぢやと思つとるのか? そうら、かういふ風に踊るもんぢやぞ!」祖父は踵で地面を蹴つて、両手をのばして、立ちあがりざま、さう言つた。
 さあ、かうなつては何も言ふがものはない。踊りと来たら、祖父は総督夫人の相手だつて立派にやつてのける達人だつた。私たち兄弟は脇へのいた。すると爺さん、胡瓜畑の傍の平らなところで、足をぐるぐる旋※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]させながら踊りだした。ところが、ちやうど半ばまで踊つて行つて、そこで一つうんと調子をつけて、旋風のやうに足をぱつぱつと投げ出しながら、得意のひと手を見せようとした時だ―
前へ 次へ
全24ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ゴーゴリ ニコライ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング