ちまけたものだ。
「あつ!」と、だみごゑの悲鳴があがつた。と見れば――祖父だ。それが祖父だらうなどとは思ひも寄らぬことだつた! まつたく桶が這つて来たものとしか思はれなかつたんで! ありやうを言へば、少し罪な話だけれど、祖父の白髪頭がすつかり洗ひ水でずぶぬれになつて、西瓜や甜瓜の皮をいつぱい引つかけた態《ざま》は、まつたく滑稽だつた。
「見ろやい、糞婆あ!」と、祖父は着物の裾で頭を拭きながら言つた。「まるで降誕祭まへの豚か何ぞのやうに、頭から煮え湯をぶつかけをつて! 時に子供たち、これからはな、お主たちも輪麺麭《ブーブリキ》を飽くほど食ふことができるぞ! 金ピカのジュパーンだつて著てあるけるだよ! さあ、こつちを見ろ、そうら俺が持つて来てやつたものを見ろ!」さう言つて祖父は壺の蓋を取つた。
さあ、いつたい何がその中に入つてゐたと思し召す? まあ、何はともあれ、よく考へてから一つ言ひ当てて戴きたい。ええ? 黄金だと? それとはまるで大違ひ、黄金どころか、塵芥《ちりあくた》なんで……。いやはや、実に口にするのも穢らはしいものなんで。祖父はぺつと唾を吐いた。壺を投げ出すと、すぐその後で手を
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