つやうな気配がする……。※[#始め二重括弧、1−2−54]はあ! はあ! はあ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]と声を出すだけで、祖父はただもう、無我夢中に駈けた。そして祭司の家の野菜畑まで駈けつけて、やつと息を入れたものだ。
※[#始め二重括弧、1−2−54]祖父さんはいつたい何処へ行つてるんだらう?※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、もう三時間ばかりも待ちくたびれた私たちは、怪訝に思つた。もうとつくに、家からは、母が温い水団を壺に入れて持つて来てゐた。いつまで待つても祖父は帰つて来ない。で、私たちはまた、寂しく夜食をすました。夜食がすむと、母は壺を洗つて、さてその洗ひ水を何処へ棄てたものかとためらつた。何しろ辺りは、処きらはず畝になつてゐたものだから。すると、母のゐる方へ向つて桶が一つ、よちよち歩いて来るではないか。尤も空はかなり薄暗かつた。おほかた、誰か若い衆が巫山戯けて、うしろに隠れて桶を押して来るのだらう。※[#始め二重括弧、1−2−54]ちやうどいい幸ひだ、この桶へ洗ひ水をぶちまけてやらう!※[#終わり二重括弧、1−2−55]母はさう呟やくと、熱い洗ひ水をザンブとぶ
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