その壺を掴んだ。※[#始め二重括弧、1−2−54]そら、よいしよ、よいしよ! もう一つだ、もう一つだ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、やつとのことで引きずり出した。※[#始め二重括弧、1−2−54]ふーつ! 先づ一服やらかさう!※[#終わり二重括弧、1−2−55]
嗅煙草入を取り出した。だが、先づ煙草を振り撒くに先きだつて、誰かをりはせぬかと、よくよくあたりを見まはしたものだ。どうやら、誰もゐなささうだ。ところが、おつ魂消たことには、不意に木の切株が喘ぎながら、むくむくとむくれあがつて来ると、耳があらはれ、真赤な眼がかつと見開かれ、鼻孔がふくらみ、鼻柱に皺がよつて、今にもくしやみをしさうになつた。※[#始め二重括弧、1−2−54]いや、煙草を嗅ぐのは止めておかう!※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、彼は嗅煙草入をしまひ込みながら呟やいた。※[#始め二重括弧、1−2−54]また、悪魔の野郎に唾をひつかけられにやならんから。※[#終わり二重括弧、1−2−55]そこで彼は手ばやく壺を手に取ると、息のつづくかぎり、一目散に駈け出したが、どうやら後ろから、何者かが木の枝で彼の足を擲
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