く景気のいい聯隊であつた。大部分の士官が竜騎兵にも負けず凍火酒《ウィモロズキ》をあふり、猶太人の鬢髪《ペイス》を掴んでは引きずり※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]した。中にはマヅルカを踊る者さへあつて、P××歩兵聯隊の聯隊長は社交の席で人と談話を交はすやうな場合には、いつも口癖のやうに、それを吹聴することを忘れなかつた。『自分の聯隊には、』と、彼はいつでも一言いつては腹を撫でながら、語るのだつた。『マヅルカを踊る者が沢山をりますぢや、いや実に沢山をりますぢや、非常に沢山!』このP××歩兵聯隊の発展ぶりを更によく読者に示すため、士官のうちに、途方もない賭博者《ばくちうち》で、軍服や軍帽から外套はおろか、下緒《さげを》から、まだその上に、どんな騎兵連の間を捜し※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つても到底見つかりさうにない下著の端に至るまで、すつかり賭けてしまふといつた、恐ろしい豪傑が二人もゐたことを、つけ加へておく。
かうした同僚にとりまかれてをりながら、イワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチの臆病さ加減には少しも変りがなかつた。彼は凍火酒《ウィモロ
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