したが、しかし二十五歳ぐらゐに見える姉娘より六つばかりも年下らしい、金髪の妹娘の方は沈黙がちであつた。
[#ここから4字下げ、折り返して5字下げ]
パスチーラ 果実や漿果を砂糖蜜で煮とかし、型に入れて半ば固めたもの。
[#ここで字下げ終わり]
だが、イワン・イワーノ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチが誰よりもよく話したり、動きまはつたりした。今や誰も自分を貶したり混ぜつかへしたりする者のないことを確信した彼は、胡瓜に就いて論じたり、馬鈴薯の植ゑ方を説いたり、また昔は実に賢い人々があつた――たうてい今時の連中とは同日に談ずべくもない!――などと言ふかと思へば、日進月歩の勢ひでますます人智が進んで、実に巧妙極まる物が発明されるなどと感嘆する。一口に言へば、彼は心を浮き立たせるやうな雑談が何よりも好きで、しまひにはただ口にのぼすことの出来る限り矢鱈にしやべり散らすといつた類ひの人物であつた。話が厳粛敬虔な問題に触れる時には、イワン・イワーノ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチは一語々々の後で頷いては溜息をつくのだつた。農作上のこととなると、例の馬車のやうな立衿から首をぬつとも
前へ
次へ
全71ページ中52ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ゴーゴリ ニコライ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング