つてしまつたことに心から満足してゐた。
「その男の言ふことなんぞ真《ま》に受けてはいけませんよ、イワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチ!」と、碌に相手のいふことも聴かないで、グリゴーリイ・グリゴーリエ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチが言つた。「みんな、口から出まかせですよ!」
 さうかうするうちに午餐は終つた。グリゴーリイ・グリゴーリエ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチは、いつもの習慣《ならはし》で少し横になるために自室へ引きさがつた。で、お客は老主婦と二人の令嬢の案内で客間へ移つた。その部屋の卓子の上には、さつきウォツカを残しておいて食事に赴いた筈であつたのに、何かのからくりみたいに、今はそれにかはつて、あらゆる種類のジャムの皿や、西瓜だの、桜ん坊だの、胡瓜だのを鉢に盛つたのが、処せまくならべてあつた。
 万事にグリゴーリイ・グリゴーリエ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチのゐないことが目立つた。老主婦の口は一段と軽くなつて、誰も頼みもしないのに、自ら進んで、*パスチーラや乾梨の拵らへ方の秘訣をいろいろ打明けた。令嬢たちも談話の仲間いりを
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