わり]
イワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチは書物の話が出たなと思ふと、てれかくしに、せつせとソースを自分の皿へよそひ始めた。
「実に驚ろくべきではありませんか、下賤な町人の身を以つて聖地を残らず巡つたのですからね。実に三千露里以上ですよ! 三千露里以上! 彼がパレスチナやエルサレムに行くことが出来たのは、一に上帝の御恵みに他なりませんて。」
「では、何ですか、その人は、」と、エルサレムのことを、よく従卒から聞かされてゐたイワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチが言つた。「その、エルサレムへも行つたとおつしやるので?」
「何のお話ですか、イワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチ?」と、食卓の端からグリゴリイ[#「グリゴリイ」はママ]・グリゴーリエ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチが口を挿んだ。
「私は、つまり、その、なんです、実にどうも、そんな遠い国々がこの世にあるのかと、さう申しただけなんです!」と、イワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチが言つた。彼はこんなに長い、むつかしい文句を一気に言
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