チの手を執つて言つた。
 グリゴーリイ・グリゴーリエ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチは、いつも自分の坐る食卓の一端に、恐ろしく大きなナフキンを胸に捲きつけて、席についた。その恰好が、まるで理髪店《とこや》の絵看板によくある図そつくりであつた。イワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチは顔を赧らめながら、指定された席に、二人の令嬢と差し向ひに坐つた。イワン・イワーノ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチはすかさず彼の隣りに陣取つて、内心、自分の博識を見せびらかす相手の出来たことを悦んだ。
「おや、イワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチ、あなたはそんな尾部《クープリック》なんぞお取りになつて! これは七面鳥でございますよ!」と老婆は、イワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチの前へ、黒い補衣《つぎ》の当つた鼠いろの燕尾服を著た土臭い給仕が、料理の載つた皿を差し出した時、その方へ振り向いて言つた。「どうぞ背肉《スピンカ》をお取り下さいませ!」
「お母さん! 誰もあなたに余計な世話を焼いて下さいと頼みやしませんよ!」と、グ
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