をつづけた。「私はあなたがこんなくらゐでいらつしやつた頃のことを、よく存じてをりますよ!」さう言ひながら、彼は掌を床から二尺あまりの高さに上げて見せた。「お亡くなりになりました御尊父は――どうぞあの方に天国の恵みがありまするやうに!――実に稀に見る御仁でした。あの方のおつくりになるやうな西瓜や甜瓜は、たうてい今時、どこを捜し※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つても見つかりつこないほどの逸物でしたつけ。けふもこの家《うち》で、」と、彼はイワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチを傍へ引つぱつて行つて耳こすりをした。「屹度あなたに甜瓜をすすめますがね――それが、いやはや、どんな甜瓜でせう? 見るのも嫌になりますよ! ところで、どうでせう、御尊父のおつくりになつた西瓜と来たら、」さう言ひながら彼は荘重な顔つきをして、大木の幹でも抱へるやうに両腕を拡げた。「慥かにこれ位はありましたよ!」
「どうぞ食卓《テーブル》にお就きになつて下さい!」と、グリゴーリイ・グリゴーリエ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチがイワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッ
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