、まだまだ若い小僧つ子だもの!※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、彼女はイワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチがもう四十の声をきくのに間もない歳であつたにも拘らず、いつも、かう言ひ言ひした――※[#始め二重括弧、1−2−54]何ひとつ、あれにわかつてゐるものか!※[#終わり二重括弧、1−2−55]
だが、彼はいつも欠かさず、麦刈の人夫について野良へも出た。それがまた、彼の温良な魂に何ともいへぬ歓びを与へた。十挺から、それ以上もの、ピカピカ光る大鎌の一致した動き、整然と列になつて倒れる草の音、或は友に逢へるが如く喜ばしげに、或は別離の如く悲しげに、相間々々に歌ひ出される刈手の唄、静かな明朗な夕べ――それがまた、何といふ夕べだらう! 何と奔放で、すがすがしい大気だらう! その時、万象《ものみな》がよみがへる。曠野は赤みを帯び、青みを帯び、様々の色に照り映える。鶉や、鴇《のがん》や、鴎や、さては、螽※[#「虫+斯」、第3水準1−91−65]《きりぎりす》など無数の虫どもが、とりどりの声をあげて鳴き出し、はからずも渾然たる合奏をなして、何れもが束の間も休まうとしない
前へ
次へ
全71ページ中31ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ゴーゴリ ニコライ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング