れたのぢやなくつて……。なんて、をかしなことでせう!……さあ、お聴きなさい!」さう言つて、彼女は言葉を歌に代へて唄ひ出した。
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血みどろの馬車が飛んでゆく。
馬車の中には弾丸《たま》に射ぬかれ、
劒で刺された哥薩克が横たはり、
右手に投槍を握つてゐる。
投槍からは血潮が滴たり、
血潮の川が流れてる。
川の上には篠懸があり、
篠懸の上で鴉が鳴く。
哥薩克を見送りながら母親も泣く。
泣くな、歎くな、母親よ!
お前の息子は嫁を取つた、
可愛い姫君を嫁に取つた。
美しい野原の地窖《つちあな》は、
扉もなければ窓もない。
歌はこれでおしまひ。
魚が蝦と踊つたとさ……
あたしを嫌ふ人の母さんは
顫へあがるがいい!
[#ここで字下げ終わり]
こんな風に、彼女の歌にはあらゆる歌が混り合つてゐた。もう二日のあひだ、彼女は自分の家で寝起をしてゐたが、キエフのことを耳にするのを嫌ひ、祈祷もせず、人を避けて、朝から夜おそくまで暗い密林の中を彷徨してゐるのだつた。尖つた小枝が白い顔や肩を掻きむしり、風が髻《もとどり》の解けた髪を吹きさらして、秋の落葉が足の下でガサガサ鳴るが――彼女は
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