山! おうちへ帰るんだよ! お母ちやんが粥《カーシャ》を拵らへて呉れるよ、さうして揺籃《ゆりかご》の中へ坊やを寝かして、かう唄ふよ。

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ねんねんよう、おころりよ!
坊やはよい子ぢや、寝んねしな!
大きくなつたら、よく遊び!
立派な哥薩克になつたなら、
悪い敵をば攻め伏せな!
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「なあ、カテリーナ! どうもお前の阿父《おとつ》つあんは俺らと仲よく暮すのが、面白くないらしいぢやないか。帰つて来た時からして、妙に気難かしく、まるで何か怒つてゐるやうに刺々《とげとげ》してゐる……。何か不服なんだよ――それならなぜ戻つて来たんだらう? 哥薩克の自由のために乾杯することも快しとしないのだ! 孫を抱いて揺ぶらうともしない! はじめ俺は何もかも胸を割つて、あのひとに打明けるつもりだつたが、どうも気が進まなくて、口へ出かかつた言葉もひつ込んでしまつたのさ。いや、あのひとには哥薩克魂といふものがないのだ! 哥薩克魂といふものは、いつ、何処で、でくはしても、必らず互ひの胸から胸へ通じ合ふものだ! どうだ、皆の者、もうぢき陸だらう? よしよし、帽子は新らしいの
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