て、その絵は立派に出来あがり、寺院へ運ばれて、外陣の壁へ嵌めこまれた。この時以来、悪魔は鍛冶屋に復讐《しかへし》をしようと心に誓つたのだ。
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蜜飯《クチャ》 乾葡萄や蜂蜜を混じて炊いた飯様の食品で、死者の供養直後、または降誕祭の前夜等に食するもの。
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だが、もはや彼が地上を徘徊することの出来るのも、剰すところ一晩きりだ。今夜こそは何とかして鍛冶屋に対する日頃の欝憤を晴らさにやならぬと思つて、隙を狙つてゐたのだ。さてこそチューブ老人が億劫がつて出かけ渋るやうにと、月を隠してしまつた訳だ。補祭の家まではかなりな道のりでもあり、そのまた道が裏道で、磨粉場《こなひきば》や、墓地の傍をとほつて谷を一つ迂※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]しなければならないと来てゐる。月夜でもあればまだしも、混合酒《ワレヌーハ》や※[#「さんずい+自」、第3水準1−86−66]天藍《さふらん》入りの火酒《ウォツカ》がチューブを誘ひ寄せもしたであらうけれど、こんな暗夜に彼を煖炉《ペチカ》から引き離して、家からおびき出すことはちよつと誰の手にも
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