ぢやあ炭の袋さへ担げないのだ。今に風に吹き倒されるやうなことにだつてなるかもしれん……。なんの!※[#終わり二重括弧、1−2−55]茲でちよつと口を噤むと、うんと一つ気張つて彼は叫んだ。※[#始め二重括弧、1−2−54]おれは女《あま》つ子ぢやねえぞ! 他人《ひと》の物笑ひになんぞなるものか! こんな袋の十《とう》をだつて担いでやらあ。※[#終わり二重括弧、1−2−55]そして、頑丈な男が二人がかりでも運びきれさうにない袋を、二つとも健気に肩へ担ぎあげた。※[#始め二重括弧、1−2−54]こいつもついでだ。※[#終わり二重括弧、1−2−55]さう言つて彼は、悪魔が底に丸くなつてしやがんでゐた、小さい袋も一緒に持ちあげて、※[#始め二重括弧、1−2−54]この中には、おれの楽器がへえつてゐた筈だて。※[#終わり二重括弧、1−2−55]さう言つて家を出ると、彼は口笛で歌を唄ひながら歩き出した。
[#ここから3字下げ]
女房の機嫌は、
おいらにやとれぬ。
[#ここで字下げ終わり]
* * *
往還は唄や笑ひや喚き声でますます騒がしくなつた。揉
前へ
次へ
全120ページ中53ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ゴーゴリ ニコライ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング