れはいつたい何でしたつけね、美しいソローハさん?」さう言つて、少し後へ飛びのいたものである。
「何だもないぢやありませんか? 腕《かひな》でござんすよ、オーシップ・ニキーフォロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチ!」とソローハが答へた。
「ふうむ! 腕かな! ヘッヘッヘッ!」補祭はさう言つて、自分の口切りに心から満足して部屋をひとまはりした。
「ぢやあ、これは何ですかね、わしのだいじなだいじなソローハさん?」同じやうな顔つきで再び女に近よると、ちよいと女のうなじに手を掛けて、さう言つてから、同じやうに後ろへ飛びさがつた。
「御存じの癖に、オーシップ・ニキーフォロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチ!」と、ソローハが答へた。「うなじでございますよ、うなじに掛かつてゐるのは頸飾でございます。」
「ふうむ! うなじに頸飾かな! ヘッヘッヘッ!」そして補祭は再び手を揉みながら部屋をひとめぐりした。
「して、これは何ですかな、較《くら》べものもないくらゐ美しいソローハさん?……」ここで、この好色な補祭がその長い指でいつたい何処に触らうとしたのか、それははつきりしないが、ちやうどその時
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