》を一杯のみほして、さて、吹雪になつたので補祭のところへ行くのは見あはせたが、彼女の家の灯りを見ると、急に今夜は一つこちらで暇つぶしをしようと思ひたつて、やつて来たのだと告げた。
村長がかう言ひきるかきらないのに、また戸を叩く音といつしよに補祭の声が戸口で聞えた。
「わしをどつかへ隠《かく》まつて呉れ。」と、村長が小声で言つた。「今ここで補祭と顔を合はせちやあ、ちと具合が悪いから。」
ソローハは、こんな大兵なお客をいつたい何処へ隠したものかと、暫らく思案に迷つたが、最後に一番大きい炭袋を選んで、中の炭を桶へぶちまけた。すると、髭を生やした堂々たる村長が頭に帽子をかぶつたまま、その袋の中へ這ひずりこんだ。
補祭はハアハアいつて、手をこすりこすり入つて来ると、招《よ》んだお客が一人もやつて来ないので、もつけの幸ひだと思つてちよつくら遊びに来たが、吹雪なんぞは屁でもなかつたと言つた。そしていきなり女の傍《そば》へすり寄つて、オホンと咳払ひをしてニヤリと笑つた。それから長い指で女のむつちりした剥きだしの腕にちよいと触つて、狡獪《ずる》さうな、それと同時にひどく得意らしい顔つきをして、「こ
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