人間といへば、法外な洒落者といふことになる。また当時でも猶太人のみは靴下に短靴といふ軽装をしてゐたから、茲にもその意が含められてゐると見てよい。
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空の旅から戻つた妖女《ウェーヂマ》はそつと焚口扉《ザスローンカ》をずらして、わが子のワクーラがお客を家の中へつれこんでをりはせぬかと、ちよつと覗いてみたが、部屋の真中に置かれた二つ三つの袋の他には誰ひとり人影のないのを確かめると、のこのこと煖炉《ペチカ》から這ひだして、温かさうに著ぶくれた裘衣《コジューフ》を脱ぎ捨てて服装《みなり》をなほした。で、一分間まへまで彼女が箒に跨がつて空を飛翔《とび》まはつてゐたなどとは、誰にも思ひもよらなかつた。
鍛冶屋ワクーラの母親は年のころ四十を幾つも出てゐなかつた。その容色はすぐれて美しくもなければ、醜くもなかつた。尤もこの年配で美貌をたもつといふことは困難だが、それでゐて彼女は、この上もなく生真面目な哥薩克連(尤もこの手合にとつては容色などは二の次ぎのことであつたが)を、うまうまと蕩しこんでゐたので、村長や、補祭のオーシップ・ニキーフォロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]
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