「どうしてあんた、ここへ来たの?」そんな風にオクサーナが切り出した。「あたしにシャベルで戸の外へ追ひ出して貰ひ度いとでもいふの? ほんとにあんた達は、そろひもそろつて、忍びこみの名人ばかりだわ。お父《とつ》つあんの留守をすぐに嗅ぎつけるんだもの。ええ、あたし、ちやんとあんた達のことは知つててよ。それはさうと、あたしの長櫃《スンドゥーク》はもう出来て?」
「ああ、出来あがるよ、祭すぎには出来あがるよ。おれがどれだけあれに骨を折つたか知つて貰へたらなあ! 二た晩といふものは仕事場から一歩も外へ出なかつたんだぜ。その代り、あれだけの長櫃はどんな梵妻《おだいこく》のとこにだつてありつこなしさ。上張りの鉄板《てつ》なんざあ、おれがポルタワへ出仕事に行つたをり、百人長《ソートニック》の二輪馬車に張つたのより、ずつと上物なんだぜ。それにどんな彩色《ぬり》に仕上がると思ふね? まあその可愛らしい白い足でこの界隈を残らず捜しまはつて見るがいいや、とてもあんなのあ見つかりつこないから! 赤や青の花をベタ一面に撒き散らすのだぜ。赫つと燃えるやうな美しさに出来あがらあ。さう、つんつんしないでさ! せめて話だけ
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