頭にぐるぐる巻きついてるんだもの。さうよ、あたしなんかちつとも綺麗ぢやないわ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]だが、また鏡を少し顔から離して見て、かう叫んだ。※[#始め二重括弧、1−2−54]ううん、やつぱりあたし綺麗だわ! まあ、なんて綺麗だらう! 素敵だわ! あたしをお嫁にする人はほんとは幸福《しあはせ》ものよ! あたしの良人がどんなに惚れ惚れとあたしを眺めることだらう! 嬉しさの余り、きつと夢中になつてしまふわ! 屹度、あたしを死ぬほど接吻するわ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]
※[#始め二重括弧、1−2−54]素敵もない娘つこだ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、こつそりそこへ入つて来た鍛冶屋が口の中で呟やいた。※[#始め二重括弧、1−2−54]それになんちふ自惚の強い女だらう! 一時間も立てつづけに鏡を覗いてゐて、それでもたんのうしないで、おまけに聞えよがしに自惚を言つてやあがる!※[#終わり二重括弧、1−2−55]
※[#始め二重括弧、1−2−54]ほんとに、若い衆さんたち、あんた方があたしを相手に出来る柄だと思つて? よくまあ、あたしを見てお呉れ。※[#終
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