言ひはやすんだらう?※[#終わり二重括弧、1−2−55]かう、ただ何か独りごとを言つて見るだけで、別になんの気もなささうに彼女は呟やくのだつた。※[#始め二重括弧、1−2−54]みんな嘘ばつかり言つてるんだわ。あたしなんか、ちつとも美しくはないわ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]
しかし、黒目勝な眼を輝やかして、魂の底まで焼きつくすやうな、得もいはれぬ快よい微笑を浮かべながら、鏡の中にチラと映つた、瑞々しく生気を帯びて、どこかあどけなく若々しいその顔は、立ちどころに正反対の事実を証拠だてた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]ほんとに、こんな黒い眉と眼とがさ、※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、鏡を手離さうともせずに、彼女はつづけた。※[#始め二重括弧、1−2−54]世界ぢゆうに又と無いほど綺麗なのかしら? こんな、天井を向いた鼻の何処が好いんだらう? こんな頬ぺたや、こんな唇の何処がいいのかしら? こんな黒い編髪《くみがみ》がどうして素敵なんだらう? ワーッ、日暮れに人が見たらぞつとするわ、だつて、この編髪《くみがみ》つたら、まるで長い長い蛇がとぐろを巻いたやうに、あたしの
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