では、まるで世間ぢゆうが、寄るとさはると、この娘の噂さで持ちきりだつた。若者たちは彼女のことをこの村はじまつて以来、第一の美人で、今後とてこれほどの美人は決して生まれつこないだらうとまで褒めそやした。オクサーナはかうした評判を残らず耳に留めて知つてもゐたし、美人にはあり勝ちのやんちやでもあつた。もしも彼女が下著《プラフタ》に下袴《サパースカ》といつた服装《なり》ではなく、せいぜい自宅着《カポート》でも身に著けて出歩かうものなら、他の娘といふ娘の影は忽ち薄れてしまつたことだらう。若者たちは競つて彼女の後をつけまはしたものだが、次第にこの美女の気紛れに我慢がならなくなつて、しまひには一人二人と彼女を離れて、それほど我儘でない他の娘へと移つて行つた。ひとり鍛冶屋だけは、彼とても他の連中よりどれだけ好い待遇を受けてゐる訳でもなかつたけれど、飽くまで強情に附き纒ひとほした。父親が出かけて行つてからも、オクサーナは長いあひだ、錫の縁を嵌めた小さい手鏡の前でおめかしをしたり、容子を作つたりして、われと我が姿に飽かず見惚れてゐた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]みんなはどうしてあたしを美人だなんて
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