浪漫趣味者として
―― Ibi omnis effusus Iabor ! ――
渡辺温

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)予々《かねがね》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#疑問符感嘆符、1−8−77]
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 H――氏と云って、青年の間に評判の高いロマンティストと懇意を得たことがあった。
 H――氏は、散歩に出る時の外は、何もしないで、下宿の好ましい調度で品よく飾った部屋に寝ころんでいることが多かった。少からぬ親の遺産が預金してあるという噂であった。
 初対面の時、私は自分も予々《かねがね》優美なロマンティストの生活を望んでいた旨を告げた。
『これは生え抜きのものです――』とH――氏は、私のギャラントリイを咎めるように云った。『ダーインにしても、マルクスにしても、アインシュタインにしても、偉いロマンティスト程、択ばれた素質を具えていました。あなたの身体組織《フィジカル・エコノミイ》の中にロマンティストとしての生まれ付きが含まれていると思いま
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