に晴々とした青空の色が深くなって行った。海は一番はるかな島影もはっきりと浮かせて、湖のように静かであった。
旻の病気は鳥渡もち直したかたちであった。
その日の午後、旻は久し振りで、陽の一っぱいに当っている縁先の籐の寝椅子に出て見た。
幸子は庭に降りて、誰も構うものがないので、延び放題に延びてたおれかけたコスモスの群れをいくつにもまとめて紐で縛りつけていた。
――おかしな花だよ。たっていられない程なら、こんなに背を高くしなくたって、よかりそうなものだわねえ。」
――僕も手伝ってやろうか。」
――お止しなさい。あんたの方がコスモスより、よっぽどヒョロヒョロのくせに。」
旻は、支那服のような派手なパジャマを着てしゃがんでいる幸子の肩から襟のあたりにこっそりと目を送った。
――ねえ。」
――なあに。」
――明日、兄貴来る日だね。」
――ええサラミを買っていらっしゃるわ。」
――僕が、起きているのを見て驚くだろうな。」
――そうね。でも、あんたいい気になって、あんまり無理しちゃ駄目よ。」
幸子は何気なく振返った拍子に旻の眼を感じて、身を固くした。
――ねえ。」
―
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