四月馬鹿
渡辺温

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)出勤際《でかけ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)真赤な|お椀帽子《ベレー・バスク》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「竹かんむり/銭のつくり」、第4水準2−83−40]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)図う/\しい
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 何が 南京鼠だい

『エミやあ! エー坊! エンミイ― おい、エミ公! ちょっと来てくれよオ、大変々々!』出勤際《でかけ》に、鏡台へ向って、紳士の身躾をほどこしていた文太郎君が、突然叫びたてました。
『なあに? なんて、けたたましい声を出すの? お朔日《ついたち》の朝っぱらから気の利かないブン大将』
 妻君のエミ子が、台所から米国製の花模様のあるゴムの前掛で、手をふきながら出て来ました。
『まあ頭を、ちょっと嗅いでみておくれ? 臭いの何んのって!』文太郎君は顰めっ面をしながら、もみ苦茶になった頭をさし出しまし
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