蒼ざめて帰って来、私にご飯を食べさせてくれた。
姉はまた、私を抱いて寝てくれもした。私は、魚のように冷めたい姉の手足が厭であったけれども、それでもすなおな私は、姉の愛情にほだされて、何時でも泪ぐんで、姉の体を温めてやった。
その中に姉は悪い病気に罹った。胸の悪くなるような匂が、姉の体から発散した。姉は、私にその病気が伝染するのを恐れて、もう一緒に寝るのは止してしまった。
私は淋しく一人で寝た。そして一人で寝ている中に、何時の間にか大きい大人になった。
2
到頭、或る日姉は私が本当の大人になってしまったことを覚った。
遊び友達のない私は、家の裏の木に登って、遠くの雲の中に聳え重なっている街を見ていた。すると姉は私の足をひっぱって、私を木から下ろしてしまった。
姉は私のはいている小さな半ズボンをたくし上げた。
姉はさて悲しい顔をして首を縦に振ってうなずいた。
姉が首を縦に振ってうなずく場合には、我々普通の人間が首を横に振って、いやいや[#「いやいや」に傍点]を、するのと同じ意味なのであった。彼女の愚な父と母とは、ひょっと誤って、幼い彼女にそんなアベコベを教えてしまった
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