イワンとイワンの兄
渡辺温

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)寝床《ベッド》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)見|恍《と》れているうちに

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「羨」の「さんずい」に代えて「冫」、95−16]
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 1

 父親は病気になりました。あんまり年をとり過ぎているので再び快くなりませんでした。父親は自分の一生がもうおしまいになってしまったことを覚って、二人の息子を――即ちイワンの兄とイワンとを枕元へ呼び寄せて遺言しました。
 先ず兄に云いました。
『お前は賢い息子だから、私はちっとも心配にならない。この家も畑もお金も、財産はすべてお前に譲ります。その代り、お前は、イワンがお前と一緒にいる限り、私に代って必ず親切に面倒をみてやって貰い度い。』
 それからさて父親は小さな銀製の箱を寝床《ベッド》の下から取り出しながら、イワンの方を向いてこう云いました。
『イワン。お前は兄さんと引きかえて、まことに我が子
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