片つ方も安心、北朗又曰く「処でね放哉、わしは五日間庵にとまるよ」愈出でゝ愈彼は芸術家なるかな、「とまるのは何日でもかまはぬが、イヤ[#「イヤ」に傍点]に落付いたネ、第一妻君が待つとるぢやないか」、実は放哉、北朗のこと故、多分一晩位庵にとまつて、大急ぎであの可愛いゝ[#「可愛いゝ」に傍点]妻君の顔を見にかへる位なとこだらうと思つて居たのだ、「イヤ[#「イヤ」に傍点]それがね、実は姫路の展覧会の収入を全部妻君に持たせて返してしまつたので、北朗カラツけつ也[#「カラツけつ也」に傍点]、故に妻君は大に安心してると云ふわけだ」、「ウフ……さうか、さうか、わかつた、わかつた」、「ソレニネ[#「ソレニネ」に傍点]今一度丸亀市で展覧会を開いて大に四国人の壺に対する識見の蒙を啓かうといふ考なのだ」、「さう云ふ事なら何日でも居てくれ、そして二人で大に句作しようぢやないか」、「その事その事、わしも大に君と句作しようと思つてやつて来たのだ」、「さうか/\」、之より両人あれこれと積る話を交した後、まだ夜中と云ふわけでも無いのだから、これから西光寺さんと井上家とを訪問して、放哉がお世話になつて居る御礼を北朗に申し
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