それでお終ひとはなんと云ふダラシ[#「ダラシ」に傍点]の無い事だらう。扨それからの一幕(之は井師には秘密)「オイ[#「オイ」に傍点]、これを持つて来たぜ」……北朗のふところ[#「ふところ」に傍点]からコロ/\と上等な正宗の二合瓶が出て来る、「イヤ[#「イヤ」に傍点]さうだらうと思つて居た処サ、実はあんまり待ちくたびれて、サツキ[#「サツキ」に傍点]、ちよい[#「ちよい」に傍点]と買つて来てちよい[#「ちよい」に傍点]とやつた処だよ」両人顔を見合せてアハヽヽヽそして大に声をひそめて放哉曰く「コレ[#「コレ」に傍点]は井師には内密だよ、井師を心配させるとこの身を切られるやうだよ」、北朗同じく声を低くして「ソヲトモナ、/\」……之で第一幕終り。
扨北朗昼間来てくれると大に都合がよかつたのだが、今は夜、と云ふのは庵には布団無し喰べものは焼キ米とお粥ばかりだから、於茲放哉嬉しまぎれに病躯を引つさげて、前の石屋さんの亭主にたのみ込み布団を借りて来てもらふ様に交渉してまづ之で一方は一安心、扨扨喰べ物……此の時北朗「ワシ[#「ワシ」に傍点]はパン[#「パン」に傍点]を持つて来たよ」、よし/\之でまづ
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