る
赤ン坊のなきごゑがする小さい庭を掃いてる
雀のあたたかさを握るはなしてやる
酒もうる煙草もうる店となじみになつた
灰の中から針一つ拾ひ出し話す人もなく
曇り日の落葉掃ききれぬ一人である
門をしめる大きな音さしてお寺が寝る
うで玉子くるりとむいて児に持たせる
(うで卵子くるりとむいて児に持たせる)
かまきりばたりと落ちて斧を忘れず
黒い帯しつかりしめて寒い夜居る
師走の夜の釣鐘ならす身となりて
師走の夜のつめたい寝床が一つあるきり
雪を漕いで来た姿で朝の町に入る
女と淋しい顔して温泉の村のお正月
破れた靴がばくばく口あけて今日も晴れる
(破れた靴がぱくぱく口あけて今日も晴れる)
寒鮒をこごえた手で数へてくれた
落葉掃けばころころ木の実
犬をかかへたわが肌には毛が無い
かたい梨子をかじつて議論してゐる
(かたい梨子をかぢつて議論してゐる)
漬物桶に塩ふれと母は産んだか
渓深く入り来てあかるし
池を干す水たまりとなれる寒月
蜜柑を焼いて喰ふ小供と二人で居る
片つ方の耳にないしよ話しに来る
両手をいれものにして木の実をもらふ
女に捨てられた
前へ
次へ
全17ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 放哉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング