る
わがからだ焚火にうらおもてあぶる
傘干して傘のかげある一日
こんなよい月を一人で見て寝る
便所の落書が秋となり居る
竹の葉さやさや人恋しくて居る
めしたべにおりるわが足音
淋しいぞ一人五本のゆびを開いて見る
火ばしがそろはぬ儘の一冬なりけり
朝の白波高し漁師家に居る
草履が片つ方つくられたばこにする
島の女のはだしにはだしでよりそふ
今日も生きて虫なきしみる倉の白壁
黒眼鏡かけた女が石に休んで居るばかり
釘に濡手拭かけて凍てる日である
つめたい風の耳二つかたくついてる
お堂しめて居る雀がたんともどつてくる
(お堂しめて居る雀がたんともどつて来る)
降る雨庭に流をつくり侘び居る
のら犬の脊の毛の秋風に立つさへ
(のら犬の背の毛の秋風に立つさへ)
人殺しありし夜の水の流るるさま
水たまりが光るひよろりと夕風
片目の人に見つめられて居た
紅葉あかるく手紙よむによし
公園冬の小径いづこへともなくある
大地の苔の人間が帽子をかぶる
お盆にのせて椎の実出されふるさと
姉妹椎の実たべて東京の雑誌よんでる
かへす傘又かりてかへる夕べの同じ道であ
前へ
次へ
全17ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 放哉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング