藁屋根草はえれば花さく
(藁屋根草はへれば花さく)

今朝の夢を忘れて草むしりをして居た

鳩がなくま昼の屋根が重たい

マツチの棒で耳かいて暮れてる

栗が落ちる音を児と聞いて居る夜

夕ベ落葉たいて居る赤い舌出す

自らをののしり尽きずあふむけに寝る

何か求むる心海へ放つ

大空のました帽子かぶらず

仏体にほられて石ありけり
(佛体にほられて石ありけり)

足音一つ来る小供の足音

何かつかまへた顔で児が藪から出て来た

昼だけある茶屋で客がうたつてる

打ちそこねた釘が首を曲げた

烏がだまつてとんで行つた

昼ふかぶか木魚ふいてやるはげてゐる

妹と夫婦めく秋草

小さい火鉢でこの冬を越さうとする

心をまとめる鉛筆とがらす

仏にひまをもらつて洗濯してゐる
(佛にひまをもらつて洗濯してゐる)

ただ風ばかり吹く日の雑念

二人よつて狐がばかす話をしてる

うそをついたやうな昼の月がある

酔のさめかけの星が出てゐる

考へ事して橋渡りきる

おほらかに鶏なきて海空から晴れる

山に家をくつつけて菊咲かせてる

しも肥わが肩の骨にかつぐ

板じきに夕餉の両ひざをそろへ
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