つ迄も忘れられた儘で黒い蝙蝠傘
蛙の子がふえたこと地べたのぬくとさ
何かしら児等は山から木の実見つけてくる
船乗りと山の温泉に来て雨をきいてる
あらしの闇を見つめるわが眼が灯もる
海のあけくれのなんにもない部屋
銅銭ばかりかぞへて夕べ事足りて居る
夕べひよいと出た一本足の雀よ
たばこが消えて居る淋しさをなげすてる
おだやかに流るる水の橋長々と渡る
(をだやかに流るる水の橋長々と渡る)
空暗く垂れ大きな蟻が畳をはつてる
蟻を殺す殺すつぎから出てくる
雨の幾日かつづき雀と見てゐる
雑巾しぼるペンだこが白たたけた手だ
友の夏帽が新らしい海に行かうか
写真うつしたきりで夕風にわかれてしまつた
血がにじむ手で泳ぎ出た草原
昼の蚊たたいて古新聞よんで
人をそしる心をすて豆の皮むく
はかなさは燈明の油が煮える
刈田で烏の顔をまぢかに見た
落葉木をふりおとして青空をはく
からかさ干して落葉ふらして居る
傘さしかけて心寄り添へる
赤とんば夥しさの首塚ありけり
障子しめきつて淋しさをみたす
庭石一つすゑられて夕暮が来る
木槿が咲いて小学を読む自分であつ
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