軽いたもとが嬉しい池のさざなみ
(軽いたもとが嬉しい池のささなみ)
静もれる森の中をののける此の一葉
井戸の暗さにわが顔を見出す
沈黙の池に亀一つ浮き上る
鐘ついて去る鐘の余韻の中
炎天の底の蟻等ばかりの世となり
山の夕陽の墓地の空海へかたぶく
柘榴が口あけたたはけた恋だ
たつた一人になりきつて夕空
(たつた一人になり切って夕空)
墓原路とてもなく夕の漁村に下りる
高浪打ちかへす砂浜に一人を投げ出す
雨に降りつめられて暮るる外なし御堂
昼寝起きればつかれた物のかげばかり
何も忘れた気で夏帽をかぶつて
ねむの花の昼すぎの釣鐘重たし
氷店がひよいと出来て白波
父子で住んで言葉少なく朝顔が咲いて
砂山赤い旗たてて海へ見せる
声かけて行く人に迎火の顔あげる
(声かけて行く人に迎火の顔をあげる)
蛇が殺されて居る炎天をまたいで通る
ほのかなる草花の匂を嗅ぎ出さうとする
(ほのかなる草花の香ひを嗅ぎ出さうとする)
潮満ちきつてなくはひぐらし
(潮満ち切ってなくはひぐらし)
空に白い陽を置き火葬場の太い煙突
むつつり木槿が咲く夕ベ他人の家にもどる
い
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