煙遠くへ冬木つらなる
かぎりなく煙吐き散らし風やまぬ煙突
犬が覗いて行く垣根にて何事もない昼
小供等たくさん連れて海渡る女よ
[一燈園時代]
朝鮮〜旧満州での生活の間に肋膜炎を病んだ放哉は、大正一二(一九二三)年秋に帰国。一時長崎に住んでのち、妻馨とも離縁。西田天香の主宰する京都・一燈園に身を寄せ、読経と托鉢、労働奉仕の日々に入った。
落葉掃き居る人の後ろの往来を知らず
牛の眼なつかしく堤の夕の行きずり
流るる風に押され行き海に出る
つくづく淋しい我が影よ動かして見る
ねそべつて書いて居る手紙を鶏に覗かれる
皆働きに出てしまひ障子あけた儘の家
静かなるかげを動かし客に茶をつぐ
落葉へらへら顔をゆがめて笑ふ事
[須磨寺時代]
大正一三(一九二四)年、放哉は一燈園の先輩の世話を受けて、兵庫県西須磨の須磨寺大師堂の堂守となる。『層雲』に投稿を始めた頃からの自由律俳句に磨きがかかるのは、この時代である。
あすは雨らしい青葉の中の堂を閉める
一日物云はず蝶の影さす
友を送りて雨風に追はれてもどる
雨の日は御灯ともし一人居る
なぎさふりかへる我が足跡も無く
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