ります。しぜん、庵のぐるりはいつも真ツ暗と申して差支へありますまい。イヤ[#「イヤ」に傍点]、お墓を残して居りました。庵の上の山に在る墓地に、ともすると時々ボンヤリ[#「ボンヤリ」に傍点]と一つ二つ灯が見えることがあります。之は、新仏のお墓とか、又は年回などの時に折々灯される灯火なのです。「明滅たり」とは、正にこの墓地の晩に時々見られる灯火のことだらうと思はれる程ボンヤリ[#「ボンヤリ」に傍点]として山の上に灯つて居ります。私は、こんな淋しい処に一人で住んで居りながら、之で大の淋しがりや[#「淋しがりや」に傍点]なんです。それで夜淋しくなつて来ると、雨が降つて居なければ、障子をあけて外に出て、このたつた三つしかない灯を、遙かの遠方に、而も離れ離れに眺めて一人で嬉しがつて居るのであります。墓地に灯が見える時は猶一層にぎやかなのですけれどもさうさう[#「さうさう」に傍点]は贅沢も云へないことです。庵の後架は東側の庭にありますので、用を足すときは必ず庵の外に出なければなりません。例の、昼間海を眺めるにしましても、夜お月さまを見るにも、そしてこの灯火を見るにも、私が度々庵の外に出ますのですから
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