あります。
[#改ページ]
念仏
六畳の座敷は、八畳よりも七八寸位、高みに出来て居りまして、茲にお大師さまがおまつりしてあるのです。此の六畳が大変に汚なくなつて居ましたので、信者の内の一人がつい先達て畳替へをしたばかりのとこなのださうでした。六畳の仏間は奇麗になつて居ります。此の島の人……と申しても、重に近所の年とつたお婆さん連中なのですが、お大師さまの日だとか、お地蔵さまの日だとか、或は又、別になんでも無い日にでも、五六人で鉦をもつて来て、この六畳の仏間にみんなが坐つて、お念仏なり、御詠歌なりを申しあげる習慣になつて居ります。
それはお念仏を申す[#「申す」に傍点]とか、御詠歌を申す[#「申す」に傍点]とか、島の人は云ふのです。それで、只単に「申しに[#「申しに」に傍点]来ました」とか、「申さう[#「申さう」に傍点]ぢやありませんか」と云ふ風に普通話して居ります。八九分通り迄は皆お婆さん許り……それも、七十、八十、稀には九十一といふお婆さんがありましたが、又、中には、若い連中もあるのであります。そこで可笑しい事には、このお念仏なり、御詠歌なりを申しますのに、旧ぶし[#
前へ
次へ
全47ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 放哉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング