て、止む時がない。死ぬる事ばかりでは無く、総ての事柄は、此の呼吸でやつて行く様だ。ヤツと云ふ間に、舞台は、クラリ/\と変つて行く。過去六十年の歴史は、此のヤツと云ふ呼吸から出て来た火花だ。両国で花火を見る時、パンと音がして、サツと幾百条の赤い光線が出る。光線は即人間の歴史で、美くしい面白いが、其パンと云ふ音の方が、俺には面白う思はれる。宇宙は、総てこの「パン」「サツ」で以て出来てゐる。「パン」を知つたら、「サツ」は解る。「サツ」を見ても、「パン」は中々解らない。此の頃は、眼で殺される人間も有ると云ふが、此の「パン」「サツ」を知らないからだと思ふ。
 自殺から、とんだ話になつたが、まだ/\面白い事が有るよ。君等は未だ日が浅いから、此処に居る生徒の気質なども、よく解らんだらうが、中々、面白い処があるよ。俺はさい/\例の化物連の御かげで、と云ふのは、化物は俺を忘れて行つてくれたからで、自修室に、二三日も遊んで居た事があるが、いや中々の面白さ。君が居る北寮の、四番室と云ふ処に居つた時も、随分愉快だつたよ。あすこには、慥かに五人居たと思つたが、今でもそーか知らん、支那人も一人居つた様だ。人数は少
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