たね、何の怒る処か、但しボンヤリした、不得要領な顔付はして居たが、起されても、寂しさうな笑ひを、無理に構造して居る、何笑ひと云ふのであるか、但し、実によく馴らした物だな、と、俺も全く感心してしまつたよ。例の章魚連は、間断なく、部屋中を飛んだり跳ねたり、なに俺も止むを得んから、イツシヨに飛んだり跳ねたりしたさ。まるで天の岩屋を眼の前に見る心地。其内、大分労れて来たと見えて、一寸、静かになつて来たと思ふと、サー大変、何と思つたか、俺を握つて居た例の石臼め、窓をあけたと思ふが早いか、ヤツと、オツポリ出した。無論俺をだ。オヤと思ふ内に、クル/\と眼の球がまはる。するとボチヤン、頭をイヤと云ふ程打ち付けた、と、それきり気絶してしまつたのだ。
フト、生気が付いて見ると、コリヤどーぢや、自分は、何時の間にやら立派な衣服を着て、人間になつて居る。眼の前を見ると、豚や、牛肉や、西洋料理は申すに不及、栗饅、煎餅、最中、に至る迄、すつかり喰ひ頃に出来てゐる。グルリと見渡すと、こゝには瓢箪形の酒の池だ。上加減と云ふので、白い煙がフワ/\と立ち上つてゐる塩梅《あんばい》。何処からともなく音楽が聞えて来る。ホワ
前へ
次へ
全44ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 放哉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング