のこゑはなめらかな砂のうへをはしる水貝《みづがひ》のささやき、
したたるものはまだらのかげをつくつてけぶりたち、
はなびらをはがしてなげうち、
身をそしり、
ほのじろくあへぐ指環《ゆびわ》のなかに
かすみゆく月をとらへようとする。
ひらいてゆけよ、
ひとり ものかげにくちびるをぬらす花よ。


  しろいものにあこがれる

このひごろの心のすずしさに
わたしは あまたのしろいものにあこがれる。
あをぞらにすみわたつて
おほどかにかかる太陽のしろいひかり、
蘆のはかげにきらめくつゆ、
すがたとなく かげともなく うかびでる思ひのなかのしろい花ざかり、
熱情のさりはてたこずゑのうらのしろい花、
また あつたかいしろい雪のかほ、
すみしきる十三のをとめのこころ、
くづれても なほたはむれおきあがる青春のみどりのしろさ、
四月の夜の月のほほゑみ、
ほのあかい紅《べに》をふくんだ初恋のむねのときめき、
おしろいのうつくしい鼻のほのじろさ ほのあをさ、
くらがりにはひでる美妙《びめう》な指のなまめかしい息のほめき、
たわわなふくらみをもち ともしびにあへぐあかしや色の乳房の花、
たふれてはながれみ
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