つゆをやどしてゐるやうなときいろの頬、
あまい唾をためてゐるちひさい唇。
黄金《きん》のランプのやうに、
あなたのひかりはやはらかにもえてゐる。
椅子に眠る憂欝
はればれとその深い影をもつた横顔を
花鉢《はなばち》のやうにしづかにとどめ、
揺椅子《ゆりいす》のなかにうづくまる移り気をそそのかして、
死のすがたをおぼろにする。
みどりいろの、ゆふべの揺椅子のなやましさに、
みじかい生《せい》の花粉のさかづきをのみほすのか。
ああ、わたしのほとりに匍《は》ひよるみどりの椅子のささやきの小唄、
憂欝はながれる魚《うを》のかなしみにも似て、ゆれながら、ゆれながら、
かなしみのさざなみをくりかへす。
まぼろしの薔薇
はるはきたけれど、
わたしはさびしい。
ひとつのかげのうへにまたおもいかげがかさなり、
わたしのまぼろしのばらをさへぎる。
ふえのやうなほそい声でうたをうたふばらよ、
うつくしい悩みのたねをまくみどりのおびのしろばらよ、
うすぐもりした春のこみちに、
ばらよ、ばらよ、まぼろしのしろばらよ、
わたしはむなしくおまへのかげをもとめては、
こころもなくさまよひあるくの
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