B(後にはこゝに瓦を敷きて中庭とせり。)高き蘆薈《ろくわい》、霸王樹《はわうじゆ》なんど、廊の柱に攀《よ》ぢんとす。檸檬樹《リモネ》はまだ日の光に黄金色に染められざる、緑の實を垂れたり。希臘《ギリシヤ》の舞女の形したる像二つあり。力を併《あは》せて、金盤一つさし上げたるがその縁少しく欹《そば》だちて、水は肩に迸《はし》り落ちたり。丈高く育ちたる水草ありて、露けき緑葉もてこの像を掩《おほ》はんとす。烈しき日に燒かれたるカムパニア[#「カムパニア」に二重傍線]の瘠土に比ぶるときは、この園の涼しさ、香《かぐは》しさ奈何《いかに》ぞや。
 闊《ひろ》き大理石の梯を登りぬ。龕《がん》あまたありて、貴き石像立てり。其一つをば、ドメニカ[#「ドメニカ」に傍線]聖母ならんと思ひ惑ひて、立ち停りてぬかづきぬ。後に聞けば、こはヱスタ[#「ヱスタ」に傍線]の像なりき。これも人間の奇《く》しき處女にぞありける。(譯者のいはく。希臘の竈《かまど》の神なり。男神二人に挑《いど》まれて、嫁せずして終りぬと云ひ傳ふ。)飾美しき「リフレア」着たる僮《しもべ》出で迎へつ。その面持《おももち》の優しさには、こゝの間《ま》ご
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