獅子の口に押し當て、水を頭に被りぬ。衣や潤《うるほ》はん、髮や亂れん、とドメニカ[#「ドメニカ」に傍線]は氣遣ひぬ。ヰア、リペツタ[#「ヰア、リペツタ」に二重傍線]を下りゆきて、ボルゲエゼ[#「ボルゲエゼ」に傍線]の館に近づきぬ。我もドメニカ[#「ドメニカ」に傍線]も、此館の前をば幾度となく過《よぎ》りしかど、けふ迄は心とめて見しことなし。今歩を停めて仰ぎ見れば、その大さ、その豐さ、その美しさ、譬へんに物なしと覺えき。殊に目を駭《おどろ》かせるは、窓の裡なる長き絹の帷《とばり》なり。あの内にいます君は、いま我等が識る人となりぬ。きのふその君の我家に來給ひし如く、いま我等はそのみたちに入らんとす。斯く思へば嬉しさいかばかりならん。
中庭、部屋々々を見しとき、身の震ひたるをば、われ決して忘れざるべし。あるじの君は我に親し。彼も人なり。我も人なり。然《さ》はあれどこの家居のさまこそ譬へても言はれね。聖《ひじり》と世の常の人との別もかくやあらん。方形をなして、いろ/\なる全身像、半身像を据ゑつけたる、白塗の※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]廊のいと高きが、小き園を繞《めぐ》れるあり
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