黷ツところを馳せ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]るに似て、一日一夜は過ぎぬ。次の朝《あした》には、胸中僅かに今一たび相見んの願を存ずるのみなりき。われは再びさきの狹き巷《こうぢ》に入り、晝猶暗き梯を上りぬ。鎖《とざ》されたる戸をほと/\と打叩けば、腰曲りたる老女《おうな》入口に現れて、貸家見に來たまひしや、檀那がたの御用には立ち難くや候はんといふ。今まで住みし人はと問へば、きのふ立ち退《の》き候ひぬ、何かは知らず、火急なる事ありと覺しくて、いとあわたゞしく見え候ひぬ。われ。行方をば知り給はぬか。老女。旅にとは申しゝが、いづくにかあらん。パヅア[#「パヅア」に二重傍線]、トリエステ[#「トリエステ」に二重傍線]、フエルララ[#「フエルララ」に二重傍線]などにや候はんと、答へもあへず戸を鎖したり。直ちに劇場に往きて見れば、これも鎖されたり。近隣の人に聞けば、きのふ打留《うちとめ》なりきといふ。
 アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]はいづくにか之《ゆ》きし。ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]なかりせば、彼人は不幸に陷らで止みしならん。否、彼人のみかは、我も或は生涯の願を
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