ニ答へつゝ、我は起ちて劇場の外《と》に走り出でぬ。
胸中の苦悶は我を驅《か》りて、狹きヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]の巷《こうぢ》を、縱横に走り過ぎしめしに、ふと立ち留りて頭を擡《もた》ぐれば、われは又|前《さき》の劇場の前に在り。時に一人の老僕ありて、入口に貼りたるけふの名題を剥ぎ取り、代ふるにあすのをもてせんとす。われは進みて此|僕《しもべ》の耳に附き、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]の宿はいづくぞと問ひしに、僕は首《かうべ》を※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]して我顏を打目《うちま》もり、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]と宣給《のたま》ふか、そはアウレリア[#「アウレリア」に傍線]の誤なるべし、けふもアウレリア[#「アウレリア」に傍線]が部屋をばおとづれ給ひし檀那達いと多かりき、宿に案内しまゐらするは易けれど、歸るには些の隙《ひま》あるべしと答ふ。われ、否、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]なり、けふ女王の役を勤めし人なりといふに、僕は暫し目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》りて、訝《いぶか》しげに我を見居たるが、さてはあの
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