]の如くなることを得ざる。愛を求むるは我心にあらずや。我心は神の授け給ひし光明にあらずや。さらば愛を求むるは神にあらずや。此時我は此の如くに思議せり。此の如くに思議して、ヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]の繁華をおもひ、その女《をみな》ありて雲の如くなるをおもひ、我血の猶熱せるをおもひ、忽ち聲を放ちて我少年の歌に和したり。
 嗚呼、是れ皆熱の爲めに發せし譫語《うはごと》のみ、苦痛の餘なる躁狂《さうきやう》のみ。我に心の光明を授け給ひし神よ、我運命の柄を握り給ふ神よ。我は御身の我罪を問ひ給ふことの刻薄ならざるべきを知る。人の心中には舌頭に上《のぼ》すべからざる發作《ほつさ》あり、爭鬪あり。是れ吾人の清廉なる守護神の膝を惡魔の前に屈する時なり。世の能く欲して能く遂ぐる人々は、我がいたづらに欲せしところに就いて、自在に評論せよ。されど汝等は裁決せざれ。さらば汝等は裁決せられざるならん。汝等は呪誼《じゆそ》せざれ。さらば汝等は呪誼せられざるべし。我は實に此の如く思議せり。此の如く思議して、復た祷《いのり》の詞を出すこと能《あた》はずして寢たり。舟は穩《おだやか》に我夢を載せて、北のかたヱネ
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