骼qぞ、と胸に抱き寄せて眠り給ひき。我は旭《あさひ》の光窓を照して、美しき花祭の我を喚《よ》び醒《さま》すまで、穩なる夢を結びぬ。
 その旦《あした》先づ目に觸れし街の有樣、その彩色したる活畫圖を、當時の心になりて寫し出さむには、いかに筆を下すべきか。少しく爪尖あがりになりたる、長き街をば、すべて花もて掩《おほ》ひたり。地は青く見えたり。かく色を揃へて花を飾るには、園生《そのふ》の草をも、野に茂る枝をも、摘み盡し、折り盡したるかと疑はる。兩側には大なる緑の葉を、帶の如く引きたり。その上には薔薇の花を隙間なきまで並べたり。この帶の隣には又似寄りたる帶を引きて、その間をば暗紅なる花もて填めたり。これを街の氈《かも》の小縁《さゝへり》とす。中央には黄なる花多く簇《あつ》めて、その角立ちたる紋を成したる群を星とし、その輪の如き紋を成したる束を日とす。これよりも骨折りて造り出でけんと思はるゝは、人の名頭《ながしら》の字を花もて現したるにぞありける。こゝにては花と花と聯《つら》ね、葉と葉と合せて形を作りたり。總ての摸樣は、まことに活きたる五色の氈《かも》と見るべく、又|彩石《ムザイコ》を組み合せた
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