體V使なりき。
 年經て我夢の夢に非ざることは明かになりぬ。彼洞窟は今カプリ[#「カプリ」に二重傍線]島の第一勝、否伊太利國の第一勝たる琅※[#「王+干」、第3水準1−87−83]洞《らうかんどう》(グロツタ、アツウラ)にして、舟中の少女も亦實にかのペスツム[#「ペスツム」に二重傍線]の瞽女《ごぜ》ララ[#「ララ」に傍線]なりしなり。

   歸途

 公子夫婦は我を率《ゐ》て拿破里《ナポリ》に歸らんために、猶カプリ[#「カプリ」に二重傍線]に留まること二日なりき。二人の我を待つ言動は、始の程こそ屡※[#二の字点、1−2−22]我感情を傷《そこな》ふこともありつれ、遭難の後病弱の身となりては、親族にも稀なるべき人々の看護の難有《ありがた》さ身にしみて、羅馬へ伴ひ行かんと云はるゝが嬉しとおもはるゝやうになりぬ。そが上かの洞窟の内に遭遇せし怪異と、萬死を出でゝ一生を獲たる幸とは、いたくわが興奮したる腦髓を刺戟して、我をして無形の威力の人の運命を左右することの復た疑ふべからざるを思はしめぬれば、我は公子夫婦の羅馬へ往けと勸め給ふを聞きても、又直ちにその聲を以て運命の聲となさんとしたり。わが健
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